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大腸癌患者のiPS細胞より樹立した樹状細胞を用いて自己の大腸癌細胞に対するin vitroでのワクチン効果を初めて確認

発表日時 鸿运国际4年3月9日(水)10:00~10:20日
場所 和歌山県立医科大学 生涯研修センター研修室(図書館棟3階)
発表者 和歌山県立医科大学外科学第2講座  教授 山上 裕機
                  講師 尾島 敏康
                  医師 丸岡 慎平

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資料(PDFファイル)

発表内容

概要

 和歌山県立医科大学外科学第2講座の山上裕機教授、尾島敏康講師、丸岡慎平医師らの研究グループは、大腸癌患者のiPS細胞由来の樹状細胞を用いて自己の大腸癌細胞に対するワクチン効果を初めて確認した。この研究成果は2022年2月28日、国際科学誌Scientific Reports電子版に掲載された。

1 背景

 代表的な抗原提示細胞である樹状細胞(DC)は、がん免疫において中心的な役割を果たしている。これまで、DCを用いたがんワクチン療法は数多く研究されており、臨床応用も始まっている。しかし、DCワクチン療法の臨床応用における大きな問題点として、がん患者から誘導されたDCの脆弱性が挙げられる。がん患者から採取できるDCは数が少なく、さらにその抗原提示能、遊走能は低い。そのため想定した免疫応答ならびにワクチン効果が得られない。これらの問題点を解決するための安定した機能と数のDCが供給できる新規ツールとして、人工多能性幹細胞(iPS)に着目した。これまで我々の研究グループはマウス iPS 細胞由来 DC(iPS-DC)の樹立に成功し、さらにメラノーマに対して、腫瘍抗原遺伝子を導入したiPS-DCワクチンは強力な抗腫瘍効果を発揮することを報告してきた。続いて健常人より樹立したヒトiPS-DCに腫瘍抗原遺伝子を導入し、in vitroにおいて抗腫瘍効果を認めることを報告した。
 現在は和歌山県立医科大学倫理委員会の承認のもと、消化器固形癌を有する患者におけるiPS-DCワクチン効果の検討を行っている。

2 研究成果

 今回、我々の研究グループは大腸癌患者さんの末梢血からヒトiPS-DCの樹立に成功した(図1)。またこれらの患者さんの切除標本よりCTOS法を用いて、腫瘍細胞のライン化に成功した(図2)。さらにこのCTOS細胞由来メッセンジャーRNAを各患者のヒトiPS-DCに導入し、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を誘導したところ、3症例すべてにおいて抗腫瘍効果を認めた(図3)。また、この腫瘍由来メッセンジャーRNAを導入したiPS-DCにより誘導されたCTLが、ネオアンチゲンに対し免疫応答可能であることを立証した(図4)。

図1 大腸癌患者より分化誘導したヒトiPS-DC
図1 大腸癌患者より分化誘導したヒトiPS-DC
図2 大腸癌患者の切除標本より誘導したCTOS細胞(セルライン化した腫瘍細胞)
図2 大腸癌患者の切除標本より誘導したCTOS細胞(セルライン化した腫瘍細胞)
図3 腫瘍由来メッセンジャーRNA導入ヒトiPS-DCは自己のCTOS細胞に対して強力な抗腫瘍効果を発揮する。
図3-1、2 図3-3
図4 腫瘍由来メッセンジャーRNAを導入したiPS-DCにより誘導されたCTLが,ネオアンチゲンに対し免疫応答可能である。

3 結論及び波及効果

 我々の研究グループは組織不適合がなく,無限増殖能をもつiPS細胞を用いたがんワクチン療法の研究に着目してきた。今回、我々はがん患者さんより誘導したiPS-DCが自己のがん細胞に対してワクチン効果を発揮する可能性があることを世界で初めて立証した。さらにこのワクチンシステムが新規がん抗原であるネオアンチゲンを認識することを初めて確認した。
 近年、オプジーボなど免疫チェックポイント阻害剤の登場により、癌免疫治療の有用性は明らかとなったが、それでも有効な症例は限られている。オアンチゲンのような強力な抗原を提示することによる陽性の癌免疫療法の適応が必要である。我々は、iPS細胞は、癌免疫治療の分野において有用な材料であると考える。
 我々の研究の最終目標は各患者由来iPS細胞を駆使した個別のiPS-DCワクチン療法という究極のテーラーメイドがんワクチン療法の構築である(図5)。
 今回の研究におけるiPS-DCワクチン療法の研究成果は前臨床試験として世界にインパクトを与えるとともに、多くの難治性消化器固形癌患者に大きな希望を与えると確信する。

図5 各患者由来iPS細胞を駆使した個別のiPS-DCワクチン療法